先週、気に入っていたプロンプトを半分ほど削った。すると、出力の質が上がった。
自慢ではない。ここ2年ほど、トークンを無駄にしたうえ、結果まで悪くしていた可能性があるという告白だ。そのプロンプトには、従来の教科書で推奨されてきた要素をすべて詰め込んでいた。役割設定(「あなたはシニアデータアナリストです」)、長い前提説明、番号付きの6ステップ、3つの実例。最後には「慎重に考え、急がず、作業を再確認してください」と念まで押していた。2024年のプロンプトエンジニアリング講座なら、どこにでも出てきそうな内容だ。
ところが、OpenAIが公開したGPT-5.6向けの新しい指針を読むと、その大半は捨てたほうがいいという。
この助言は耳が痛かった。トークンだけでなく、時間もつぎ込んでいたからだ。ただ、じっくり考えるほど納得できた。
「長いほどよい」という助言が、ついに通用しなくなった理由
この2年間、プロンプトエンジニアリングの定石は一貫していた。とにかく追加すること。ペルソナを加える。背景情報を加える。手順を加える。例を加える。モデルが手を抜かないよう、最後にひと押しする。当時のモデルはまだ力不足だったため、これは実際に役立った。指示を一つ足すたびに、モデルが自力では組めない足場を用意できたからだ。
GPT-5.6は、もうその段階のモデルではない。
OpenAIの説明は率直だ。新しいモデルは、各手順を逐一書かなくても、文脈から本来の目的や求められる仕事の水準を読み取る能力が上がっている。不要になった細かな指示を一つずつ与えても、助けにはならない。ノイズが増えるだけだ。
この変化を説明するとき、何度も思い浮かぶたとえがある。従来の方法では、モデルを一挙手一投足まで指示が必要な新人として扱っていた。「左足、右足、相手選手を見ろ」といった具合だ。一方、GPT-5.6はメッシに近い。サイドラインから動きを逐一指示したところで、馬鹿なことを言っていると思われるだけだろう。選手は成長したのに、指導書は古いままだった。
OpenAIの数字が実際に示していること
ベンダーが自ら公開するベンチマークには普段なら冷めた目を向けるが、今回は真剣に受け止めるだけの具体性がある。
OpenAI社内のコーディングエージェント評価では、システムプロンプトを簡潔にした構成により、評価スコアが約10〜15%上がった。同時に、総トークン数は41〜66%、コストは33〜67%減っている。
珍しく、2つの指標が同時に好転しているので、もう一度確認してほしい。短いプロンプトのほうがスコアは高く、コストは低かった。効率のために品質を犠牲にする必要はない。膨れ上がったプロンプトは、両方の面で負けていた。
OpenAIは慎重に、これらの数字を「方向性を示すもの」と位置づけ、各自のタスクで検証するよう求めている。それは妥当だ。ただし、示された方向性には反論しにくい。実際に試した結果とも一致していた。
このガイドには、もう一つ目立ちにくい発見が記されている。最近、多くの人が遭遇している不可解な失敗を説明する内容だ。GPT-5.6は、プロンプトで定めた取り決めに非常に厳密に従う。旧世代のモデルなら、矛盾する2つの指示から片方を黙って選び、もう片方を無視していた。GPT-5.6は両方を守ろうとする場合があり、その過程で推論トークンを消費し、処理が遅くなり、費用も増える。ある段落で「詳しく書く」、別の段落で「簡潔に書く」と指示するプロンプトは、もはや単に冗長なだけではない。出力を積極的に不安定化させる。
こう考えると、肥大化したプロンプトの見え方も変わる。ただ無駄なのではない。ルールを一つ足すたびに、3段落前に書いたルールと矛盾する可能性が増えるのだ。
考えを変える決め手になったビフォーアフター
この内容を読んだとき、ちょうど実際のタスクを抱えていた。そこで、テストに使うことにした。
従来の書き方。この2年間、私が使ってきた方法だ。
「まず、重複のない取引内容の一覧を作成してください。次に、似た内容をグループ化し、各グループにカテゴリーを割り当てます。取引内容とカテゴリーの対応表を作ってください。その後、取引シートにCategory列を追加し、XLOOKUPを使って各取引に正しいカテゴリーを割り当てます。新しい取引が追加されたとき、数式が自動的に下まで適用されるようにしてください」
このプロンプトでも動く。ただし、ステップ1、ステップ2、ステップ3と、モデルが考えるべきことまでこちらで決めている。念のためツール名まで指定している。
新しい書き方。最初に結果を示す。
「表記が統一されていない取引内容の一覧があります。各取引を自動で分類し、新しい取引が入ってきても動き続ける仕組みにしたいです。最適な方法は何ですか?」
目的も制約も同じだ。ただし、最初のプロンプトはモデルに歩き方を指示する。2つ目は行き先を伝え、道順はモデルに任せている。
より良い答えが返ってきたのは2つ目だった。それ以上に重要なのは、なぜその方法を選んだのかまで説明されたことだ。最初のプロンプトでは、そうならなかっただろう。方法を決めつけるのをやめると、それまで固執していた手法について、新しく学べることもある。
必要な情報を残しながら、プロンプトを短くする方法
プロンプトを短くすることと、中身を空にすることは違う。残す価値があるのは、文脈から推測できない情報だ。求める結果、制約、そして何をもって「完了」とするか。それ以外は削除候補になる。
実際には、次の形が残る。
- 求める結果。手順でも方法でもない。作業が終わった時点で、何が出来上がっていればよいのか。
- 制約。越えてはいけない一線。機能を捏造しない、何も削除しない、指定したファイルだけを見る、といった条件だ。
- 合格基準。結果を返す前に、モデルが自分の作業を確認するための基準。
通常はこれで足りる。ペルソナも、「ステップごとに考えて」という指示も、手を抜かないよう念押しする言葉も不要だ。こうした要素は、能力の低いモデルを支える足場だった。GPT-5.6には必要なく、書けばその分だけトークンを消費する。
OpenAIが挙げた削除候補は、モニターに貼っておく価値がある。同じルールの繰り返し、動作を変えない文体指定、動作を変えない例、モデルがすでに安定して処理できる内容についての手順指示だ。残すものは少ない。ユーザーが目にする成果物、成功条件、停止条件、安全性や根拠に関する制約である。
すでに機能しているプロンプトを実際に見直すなら、実務上の注意点が一つある。削るのは一度に一項目だけにすること。指示のまとまりを一つ削り、同じ評価をもう一度実行して比較する。一気にすべてを取り除いて出力が悪化したら、どの削除が問題だったのか分からなくなる。
これは、NSFWAIToolでツールを検証するときにも使っているルールだ。タスクは固定し、変数を一つだけ変え、本当に結果が良くなるかを確かめる。当サイトのレビュー方法も、提供元の主張と、再現できるテスト結果を区別する考え方に基づいている。
細かな指示を残す価値がある場面
ここは慎重に扱いたい。「短いほどよい」という考えも、無条件に当てはめれば別のカーゴカルトになってしまうからだ。
OpenAIのガイドでも、実際の製品要件を表す場合や、測定によって確認された弱点を補う場合には、例や文体の指示を残すよう述べている。出力に特定の語り口、形式、法的制約が必要なら、それは残すべきだ。少数の例を示すfew-shotが、形式を安定して教える唯一の方法なら残せばいい。目指すのはトークン数の最小化ではない。仕事をきちんとこなせる範囲で、最小限のトークン数にすることだ。
汎用チャットボット以外に目を向けると、なぜこれが重要なのか分かる。AIコンパニオンには、キャラクター、口調、記憶に関する文脈が本当に必要かもしれない。一方、AI動画生成ツールには、映像や動きについて具体的な制約が必要になる。両方のプロンプトを同じ3行の型に削るのは、本質を見失っている。役に立つプロンプトとは、そのツールに必要な情報を保てる範囲で最も短いものだ。
本当の変化は、指示を出す順番にある。従来は、念のため最初のプロンプトにすべての指示を詰め込むのが当たり前だった。これからは「まず任せ、後から絞る」。モデルにタスクを渡し、処理の仕方を見て、実際に足りない部分だけ指示を追加する。最初から1,000語のプロンプトを書くより速く、どの指示が本当に役立っていたのかも分かる。
多くの人が混同する「ペルソナ」と「経路」の違い
このガイドが公開されてから、逆方向に振り切れる人も見かける。ペルソナはもう不要だと考える人たちだ。しかし、それは違う。この2つを混同すると、実際に判断を誤る。
ペルソナが決めるのは、出力がどのように聞こえるかだ。トーン、言葉遣い、役割、文章上の語り口。一方、段階的な指示が決めるのは、モデルがどのように答えへ到達するか、つまり実行経路だ。両者は別の調整項目である。
新しい指針が求めているのは、経路を細かく指定しすぎないことだ。語り口の管理を手放せとは書かれていない。顧客向けのコピーに特定ブランドらしい表現が必要なら、引き続きそう指定すればいい。それは製品要件であり、手順を一つずつ決める台本ではない。文体は利用者が決める。経路はモデルに選ばせる。
言い換えれば、モデルには目的地とガードレールを示し、運転方法まで口出ししないことだ。
長文からではなく、短いプロンプトから始める
ここまでの話から一つだけ持ち帰るなら、順番を覚えてほしい。まず、求める結果と合格基準を書く。次に、文字数を半分にする。さらにもう一度、半分にする。それでも不安なら、そのまま送って返答を確かめればいい。出力が実際に不足した箇所にだけ、いつでも一文を戻せる。
私は、この点を苦労して学ぶことになった。追加していた指示の大半は、モデルの助けになっていなかった。安心したかったのは自分だったのだ。GPT-5.6は十分に賢くなり、私を安心させるための言葉は、答えとの間に挟まるノイズでしかなくなった。
2023年に学んだのは、長いプロンプトの書き方だった。2024年に学んだのは、コンテキストウィンドウの管理方法。そして2026年の教訓は、もっと単純で、もっと難しい。余計な口出しをやめ、求める結果を説明し、モデルに本来の仕事を任せることだ。
よくある質問
GPT-5.6では、短いプロンプトが常に優れていますか?
いいえ。見出しだけを受け取ると、ここで誤った助言になりかねない。OpenAI社内のコーディングエージェント評価のサンプルでは短いプロンプトが上回ったが、OpenAI自身は結果を方向性を示すものとしている。一文を削ったことで実際のタスクの結果が悪化したなら、その一文は戻すべきだ。
最初に何を削るべきですか?
まずは、書いていて気恥ずかしくなるような部分から。同じルールの重複、何も変えない一般的な役割設定、モデルがすでに必要としない例、慎重に考えるよう促す注意書きだ。求める結果、制約、完了の定義には手をつけない。
長いプロンプトが今でも妥当なのは、どのような場合ですか?
モデルが本当に必要とする情報が、その長さに含まれている場合だ。独自の文体、固定された出力スキーマ、専門分野の背景情報、法的な境界、実際に確認した失敗を修正するための例などが該当する。長いこと自体が問題なのではない。不要なことが問題だ。
ペルソナは使わないほうがよいですか?
装飾にすぎない場合だけだ。回答の語り口、対象読者、専門的な基準を決めるペルソナなら、実際に役割を果たしている。見直すべきなのは、出力の個性を管理することではなく、台本のように決められた経路である。
同じ助言は、AIチャット、画像、動画ツールにも当てはまりますか?
自動的に当てはまるわけではない。製品ごとにプロンプトの読み取り方が異なり、失敗の仕方も違う。チャットツールには関係性や記憶の文脈が必要かもしれない。動画ツールには、動作やカメラについて正確な制約が必要な場合がある。一つの万能テンプレートを使い回さず、ワークフローごとに検証するべきだ。
短いプロンプトが本当に優れているか、どう検証すればよいですか?
同じ一連のタスクを使い、指示のまとまりを一つだけ削って、品質、失敗、トークン使用量、レイテンシ、コストを比較する。一度だけ運よく良い回答が出ても、ほとんど何の証明にもならない。繰り返しても改善が維持されたとき、初めてその部分を削る価値がある。